事業者は情報の取扱い定めた規程の策定を
厚生労働省は、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」を公表した。この指針は、労働者の心身の状態の情報(以下「情報」)の取扱いに関する原則を明らかにし、事業者が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用などをまとめたもの。指針では、健康診断の結果など労働安全衛生法令において労働者本人の同意を得なくても収集することのできる情報であっても、取り扱う目的及び取扱方法等について、労働者に周知したうえで収集することが必要としている。
指針は、情報の取扱いに関する原則について、情報を取り扱う目的は、労働者の健康確保措置の実施や事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行であり、そのために必要な情報を適正に収集し、活用する必要があるとしている。そして、情報がその目的の範囲内で適正に使用され、事業者による労働者の健康確保措置が十全に行われるよう、事業者は、当該事業場における取扱規程を定め、労使で共有することが必要としている。
そのうえで、取扱規程に定めるべき事項として、①情報を取り扱う目的及び取扱方法、②情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う情報の範囲、③情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法、④情報の適正管理の方法、⑤情報の開示、訂正等及び使用停止等の方法、⑥情報の第三者提供の方法、⑦事業承継、組織変更に伴う情報の引継ぎに関する事項、⑧情報の取扱いに関する苦情の処理、⑨取扱規程の労働者への周知の方法──を例示している。なお、②の事項については、個々の事業場における情報を取り扱う目的や取り扱う体制等の状況に応じて、部署や職種ごとに、その権限及び取り扱う情報の範囲等を定めることが適切であるとしている。
また、取扱規程の策定に当たっては、衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを共有することが必要としている。
情報の収集に際しての本人同意の取得については、健康診断・長時間労働者に対する面接指導・ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された者に対する面接指導の結果、健康診断・長時間労働者の面接指導の事後措置について医師から聴取した意見など、労働安全衛生法令において労働者本人の同意を得なくても収集することのできる情報であっても、取り扱う目的及び取扱方法等について、労働者に周知したうえで収集することが必要としている。
他方、健康診断の再検査・精密検査の結果、健康相談・保健指導の結果、がん検診の結果などの労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことについて規定されていない情報を収集する際には、個人情報保護法第17条第2項に基づき、労働者本人の同意を得なければならないとしている。