無期化回避の雇止め相談には対処法教示も

厚生労働省は、「平成30年度地方労働行政運営方針」を策定し、都道府県労働局に通達した。それによると、改正労働契約法による無期転換ルールに関して、使用者に対して改正法の趣旨を踏まえた対応を強く促し、無期転換を回避する目的での雇止めを把握した場合は、積極的に啓発指導する。なお、実際に雇止めにあった等の相談を受けた場合には、とりうる手段を教示するなどの対応を行う。また、罰則付きの時間外労働の上限規制等を盛り込んだ労働基準法等の改正案が成立した場合には、事業主に法制度の周知を図る。

 運営方針は、今年度の地方労働行政の柱を示したもので、各都道府県労働局では、これを踏まえて各々の管内事情に即した重点を盛り込んだ独自の運営方針を策定し、行政運営を行っている。

30年度の運営方針では、労働行政を取り巻く情勢、地方労働行政の課題、地方労働行政の展開に当たっての基本的対応──を記したうえで、重点施策を行政分野別(担当部署別)に示している。

行政分野別の重点施策は、①総合労働行政機関として推進する重点施策、②雇用環境・均等担当部署の重点施策、③労働基準担当部署の重点施策、④職業安定担当部署の重点施策、⑤労働保険適用徴収担当部署の重点施策、⑥東日本大震災からの復興支援──となっている。

労働基準行政に関する重点では、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入、高度プロフェッショナル制度の創設などを盛り込んだ労働基準法等の改正案が成立した場合には、事業主等に対して法制度の周知を図るとしている。特に、罰則付きの時間外労働の上限規制については、その施行に向けて、特別条項を適用する場合でも上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月45時間、年360時間の原則上限に近づける努力が求められることの周知を図るとしている。

職場におけるメンタルヘルス対策では、ストレスチェックの実施の徹底を図るため、労働基準監督署への実施報告書の提出状況等から実情を把握し、労働者数50人以上の事業場に対して重点的な指導を行う。

また、監督指導等において、違法な長時間労働や過労死等が認められた場合には、産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策の専門家による訪問指導の受入れを強く勧奨する。加えて、メンタルヘルス対策に係る指導を実施する際には、パワーハラスメント対策の取組みについて指導することとしている。

雇用環境・均等行政の重点では、無期転換ルールの周知・啓発として、使用者に対して、改正労働契約法の趣旨を踏まえた対応が行われるよう強く促すこととしている。さらに、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的での雇止め等を把握した場合には、積極的に啓発指導を行う。なお、実際に雇止めにあったなどの労働者等からの相談を受けた場合には、相談者の意向を踏まえ、とりうる手段を教示するなど、適切に対応するとしている。

また、ハラスメント対策として、事業主に対し、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントなどの様々なハラスメントの相談に一元的に応じることができる体制を整備し、一体的にハラスメントの未然防止を図るよう促すとともに、労働局において労働者からの相談への迅速な対応を行うこととしている。