36協定は診療科ごとの実態考慮した内容に

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(座長・岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)はこのほど、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」をまとめた。それによると、医師の在院時間の的確な把握、36協定の自己点検──を取組みの中心に挙げている。その中で、36協定については、診療科ごとの実態を考慮した複数の定めを検討すること、点検後の36協定を医師に正しく周知することを求めている。同省では、病院団体などを通じて各医療機関に周知し、自主的な取組みを促すことにしている。

 政府が進める「働き方改革」では、長時間労働の是正が柱の1つになっている。働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)では、長時間労働是正のため、労働基準法を改正し、36協定による時間外労働に法的上限を設けることが示された。そして、政府は、今国会で改正法の成立を目指す方針を打ち出している。

その中で、医師については、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることから、時間外労働規制の対象とするものの、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、別途検討の場を設け、2年後を目途に規制の具体的内容等を検討する形になっている。

同検討会は、これを踏まえ設置されたもので、昨年8月から、医師に対する時間外労働規制の具体的あり方、医師の勤務環境改善策などについて検討している。そして、時間外労働規制の施行を待たずとも、各医療機関ができることから自主的に取り組むことが重要であるとの認識の下、今回の緊急的な取組みをまとめた。

その主な内容は、まず、労働時間管理の適正化に向け、医師の在院時間の客観的な把握を行うとしている。ICカード、タイムカードが導入されていない場合でも、出退勤時間の記録を上司が確認するなどして把握することを求めている。

次に、36協定がなく時間外労働が行われていないか、また、36協定で定める時間数を超えて時間外労働を行わせていないかを確認することを挙げている。そして、医師を含む医療従事者とともに36協定で定める時間外労働時間数の自己点検を行い、必要に応じて見直しを行うとしている。

なお、自己点検に当たっては、診療科ごとの実態の違いを考慮した複数の定めとする対応も検討し、あわせて、就業規則等の労働関係法令上作成が必要とされている書類についても内容を確認したうえで、医師に対してきちんと周知すること挙げている。

このほか、衛生委員会や産業医などを活用して、長時間勤務となっている医師、診療科等ごとに対応策を議論することなどを示している。

同省は、関係団体などを通じて緊急取組みの内容を周知し、今年の秋にも実施状況を取りまとめ、検討会の今後の議論の参考とすることとしている。