業種ごとの勤務環境の改善の取組みに140億円

平成30年度の厚生労働省予算案がまとまった。30年度の予算案は、一般会計31兆1262億円(うち社会保障関係費30兆7073億円)で、29年度(30兆6873億円。うち社会保障関係費30兆2483億円)と比べ4389億円(1.4%)の増加となった(29年度の額は当初額)。また、特別会計は、年金特別会計が67兆3620億円(対29年度当初比1兆2558億円増)、労働保険特別会計が3兆6089億円(同620億円増)となっている。

予算の主要事項は、⑴働き方改革の着実な実行や人材投資の強化等を通じた労働環境の整備・生産性の向上、⑵女性、若者、障害者、高齢者等の多様な働き手の参画、⑶安心で質の高い医療・介護サービスの提供、⑷健康で安全な生活の確保、⑸子どもを産み育てやすい環境づくり、⑹障害者支援の総合的な推進、⑺自立した生活の実現と暮らしの安心確保、⑻安心できる年金制度の確立、⑼施策横断的な課題への対応──となっている。

労働関係の主な項目をみると、最重点となっている働き方改革の着実な実行に関しては、①同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、②長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備、③生産性向上、賃金引上げのための支援、④女性・若者の活躍の推進、⑤人材投資の強化、人材確保対策の推進、⑥治療と仕事の両立、障害者・高齢者等の就労支援──が柱。

具体的な施策としては、まず、同一労働同一賃金の取組みでは、非正規雇用労働者の待遇改善に向け、各企業が賃金制度も含めた待遇全般の点検等を円滑に行うため、業界別の特性を踏まえた「同一労働同一賃金導入マニュアル」を作成し、周知・啓発を図る。また、都道府県労働局において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差に関する相談支援などを行う。さらに、47都道府県に働き方改革推進支援センターを設置し、専門家による個別相談援助や電話相談等を実施する。これらの施策に合計19億円を計上している。

非正規労働者のキャリアアップの推進については、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を実施した事業主に支給する助成金の拡充などに834億円を計上した。このほか、労働契約法に基づく有期労働契約の無期転換が平成30年度から本格的に行われることを踏まえて、周知徹底、導入支援、相談支援など無期転換ルールの円滑な運用に2億5000万円計上している。

次に、長時間労働の是正に向け、業種ごとの勤務環境改善の取組みを進める。自動車運送事業については、時間外労働の削減や労働者の運転免許取得のための職業訓練等の支援を行う。また、トラック運送事業については、荷主とトラック運送事業者の協働による労働時間短縮に向けたハンドブック等を作成する。

建設業については、新たに時間外労働の上限規制に対応するための助成金の支給対象とするなど、長時間労働の是正、人材確保、安全衛生対策の推進等に向けた支援を行う。IT業界については、業界団体等と連携し個別訪問によるコンサルティングを実施する。これらの施策に合わせて140億円を計上している。

このほか、安全衛生関係の施策では、第13次労働災害防止計画の重点業種等の労働災害防止対策の推進に82億円、中小の建設業者の安全衛生管理能力の向上に向けた支援など、建設工事従者の安全及び健康確保対策の推進に2億5000万円を計上した。