36協定未届の事業場対象に自主点検実施

 厚生労働省は、長時間労働の抑制及び過重労働の防止対策強化の一環として、36協定を届け出ていない事業場に対する労働条件の相談指導を来年度新たに実施する。この相談指導は、36協定が未届の規模10人以上の事業場すべてを対象に、自主点検により労働時間等の実態を把握したうえで、集団での相談指導や個別訪問指導を行う。また、自主点検や相談指導に応じない事業場の情報を労働基準監督機関に提供する。このほか、36協定の適正な締結・届出に関するキャンペーン期間を設け、広く周知啓発を図ることとしている。

 同省では、平成28年12月に長時間労働削減推進本部において、「『過労死等ゼロ』緊急対策」が決定されたこと、また、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日「働き方改革実現会議」決定)で、「長時間労働の是正のための監督指導の徹底」等が盛り込まれたことを踏まえ、長時間労働の是正及び過重労働による健康障害防止対策を強化している。

具体的な取組みとしては、時間外・休日労働時間数が1ヵ月あたり80時間を超えている疑いがある事業場及び長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を実施しているほか、違法な長時間労働等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する指導及び企業名公表などを行っている。

そして、来年度は、長時間労働の是正に向けた監督指導体制の強化をさらに進める方針。

同省が実施した「平成25年度労働時間等総合実態調査」の結果によると、36協定を締結していない事業場の割合は44.8%となっている。事業場規模別では、小規模事業場ほど締結していない事業場の割合が高く、規模301人以上では3.9%、101~300人では5.1%、31~100人では9.9%と31人以上の規模では1割未満であるのに対し、10~30人では22.6%、9人以下では53.2%となっている。また、締結していない理由としては、「時間外労働・休日労働がない」(43.0%)を除くと、「36協定の存在を知らなかった」(35.2%)及び「36協定の締結・届出を失念していた」(14.0%)が約半数を占めている。

こうしたことから、まず、36協定が未届である労働者数10人以上の事業場すべてを対象に、長時間労働等の実態を把握する自主点検を実施したうえで、集団での相談指導や個別訪問指導を行う。同省労働基準局の推定によれば、対象となる事業場数は約47万ヵ所で、3年計画で実施する予定。

これにより、36協定の締結を始めとした労働基準法の知識及び遵法意識を持たせ、長時間労働や法違反の解消を目指すこととしている。なお、自主点検・相談指導に応じない事業場については、その情報を労働基準監督機関に提供する。

次に、過重労働防止対策に必要な知識やノウハウを習得するためのセミナーを全国で実施するなど、毎年11月に行っている「過重労働解消キャンペーン」を引き続き実施する。加えて、事業主に36協定の適正な締結・届出を呼びかけるキャンペーン期間を新たに設け、ポスター、パンフレットを作成・配布して、広く周知啓発を図ることとしている。

さらに、インターネット上の求人情報、書き込み等の各種情報を監視し、長時間労働等が疑われる問題事業場の情報を収集する事業の拡充も行う。

このほか、「労働時間管理適正化指導員」を増員し、特別条項付きの36協定を届け出た事業場など、長時間労働が疑われる事業場等に対する自主点検や、労働時間管理適正化のための指導が必要な事業場に対する訪問指導を拡充する。

また、「時間外及び休日労働協定点検指導員」を増員し、労働基準監督署における36協定届の受理に際し、届け出られた36協定が限度基準に沿ったものとなるよう点検及び窓口指導する取組みも拡充することとしている。