違法な時間外労働あった事業場が43%

厚生労働省は、平成28年度に実施した長時間労働が疑われる事業場を対象とした監督指導の結果をまとめた。それによると、監督を行った約2万4000事業場のうち43.0%に当たる1万272事業場に違法な時間外労働が認められた。そのうち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が1ヵ月80時間超が76.8%、同100時間超が54.1%などとなっている。また、賃金不払残業があった事業場は1478事業場(全体の6.2%)だった。なお、これら違反事業場に対しては、是正勧告書を交付し、是正・改善に向けた指導を行った。

 同省では、長時間労働が疑われる事業場に対する集中的な監督指導を平成27年度から行っている。27年度は監督対象事業場を月100時間を超える残業が疑われる事業場等としていたが、28年度は月80時間に対象を拡大している。その結果、28年度の監督実施事業場数は、27年度(1万185事業場)の2倍以上の2万3915事業場に及んだ。

監督指導の結果をみると、監督を行った事業場のうち、1万5790事業場(全体の66.0%)で労働基準関係法令違反が認められた。なお、違反率は監督対象事業場を拡大した関係で、27年度(76.6%)より10.6ポイント低下した。主な違反内容は、違法な時間外・休日労働があったものが1万272事業場(全体の43.0%)、賃金不払残業があったものが1478事業場(同6.2%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが2355事業場(同9.8%)となっている。

主な業種別(監督実施事業場数が800を超えるもの)の違反率をみると、接客娯楽業が77.9%と最も高く、次いで、運輸交通業73.9%、製造業70.3%、商業68.1%、教育・研究業62.1%の順となった。

また、違反事項別では、違法な時間外労働は、接客娯楽業が56.8%と最も高く、以下、運輸交通業52.5%、製造業48.9%、商業44.5%、教育・研究業33.1%の順となっている。賃金不払残業は、接客娯楽業が10.6%と最も高く、以下、商業9.6%、建設業6.1%、製造業5.3%、教育・研究業5.2%の順となった。

違法な時間外労働があった事業場のうち、時間外労働の実績(法定労働時間を超える労働及び法定休日における労働)が最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり80時間を超えるものが7890事業場(76.8%)、同100時間を超えるものが5559事業場(54.1%)、同150時間を超えるものが1168事業場(11.4%)、同200時間を超えるものが236事業場(2.3%)となっている。

また、賃金不払残業があった事業場のうち、時間外労働の最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり80時間を超えるものが909事業場(61.5%)となった。

次に、主な健康障害防止に関する指導状況をみると、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが2万515事業場(全体の85.8%)、そのうち時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導したものが1万4012事業場(同68.3%)となっている。また、労働時間の把握方法が不適正なため指導したものが2963事業場(全体の12.4%)、そのうち時間外労働の最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり80時間を超えるものが1313事業場(指導した事業場の44.3%)となった。