全国で22円から26円の引上げを提示

中央最低賃金審議会(会長・仁田道夫東京大学名誉教授)は7月27日、平成29年度地域別最低賃金改定の目安について、ランクごとの引上げ額をAランク26円、Bランク25円、Cランク24円、Dランク22円とする答申を取りまとめ、塩崎厚労相に提出した。厚生労働省によると、目安が示した引上げ額の全国加重平均は25円となる。今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会で引上げ額が審議され、10月初めには改定後の最低賃金が発効する見通し。なお、目安通りに最低賃金が改定された場合、最高額は東京都の958円となる。

 地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮するとともに、生活保護施策との整合性に配慮して決定することになっている。

地域別最低賃金は毎年見直しが行われており、額の改定にあたっては、中央最低賃金審議会が改定の目安を各都道府県の地方最低賃金審議会に示す方式がとられている。

今年度の目安をめぐる中央最低賃金審議会の審議は、6月27日に厚生労働省が同審議会に目安の調査審議を諮問し始まった。同審議会は、例年通り目安に関する小委員会を設け、4回にわたって審議を行った。

小委員会では、労働者側委員は、①当面目指すべき水準として、最低賃金額が800円以下の地域をなくすことが急務であり、Aランクについては1000円への到達を目指すべきであり、これらの水準の到達時期については、経済環境にも配慮しつつ、3年以内とすべきである、②目安が導入された昭和53年当時に比べ、生活文化圏や経済圏が広範囲となり、隣県との格差拡大が働き手の流出にもつながっている状況を是正するためには、地方最低賃金審議会の自主性発揮を促すことが必要であり、目安額を示す際はこうした点を考慮すべきである──などと主張した。

一方、使用者側委員は、「最低賃金の大幅な引上げには、当該引上げの影響を受けやすい中小零細企業に対する効果的な生産性向上等の支援策の実施や拡充が不可欠である一方、政府の施策の十分な成果が見られないまま最低賃金の大幅な引上げだけが先行して実施されてきた」との現状認識を示したうえで、「今年度についても合理的な根拠を示さないまま、最低賃金の大幅な引上げの目安を提示することとなれば、目安制度、ひいては最低賃金の決定プロセス自体が成り立たなくなるのではないか」との強い懸念を表明した。

そして、今年度の目安審議に当たっては、諮問文で求められている働き方改革実行計画への配慮は必要であるが、目安審議は、最低賃金法第9条に定めれている最低賃金決定の3要素を考慮すべきであり、また、急激に上昇した影響率を十分に考慮した合理的な根拠に裏打ちされた目安を提示すべきである──などと主張した。

その結果、29年度地域別最低賃金改定の目安については、その額に関し意見の一致をみるに至らず、昨年同様、目安に関する公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示する答申内容となった。

公益委員見解は、(1)都道府県の各ランクごとの引上げ額の目安は、Aランク26円、Bランク25円、Cランク24円、Dランク22円とする、(2)地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する、(3)生活保護水準と最低賃金との比較では、来年度以降の目安審議においても、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないかを確認することが適当と考える──というもの。

今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会において最低賃金額改定の審議が行われ、早い地域では10月初めには新しい最低賃金が発効することになる。

厚生労働省によると、今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は25円(昨年度は24円)となり、目安額通りに最低賃金が決定されれば、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年以降で最高額となる引上げになる。

また、目安額度通りの引上げが行われた場合、最も高い最低賃金は東京都の958円、一方、最も低い最低賃金は宮崎県と沖縄県の736円となる。