残業の上限規制は運転業務、建設業も適用へ

政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍首相)は3月28日、同一労働同一賃金の実効性を確保する法改正、法改正による時間外労働の上限規制導入──を柱とした「働き方改革実行計画」を決定した。時間外労働の上限規制は、臨時・特別な場合として労使協定を結ぶ特例を除いて月45時間、かつ、年360時間を罰則付きの法定事項とする。また、特例の場合の上限についても年720時間・1ヵ月100時間未満(休日労働を含む)などを規定する。なお、この上限規制は、自動車運転業務、建設事業にも適用するとしている。

 同会議は、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の是正などを中心とした働き方改革の具体的な方向性について、昨年秋から議論を行ってきた。会議が取り上げたテーマは、(1)非正規雇用の処遇改善、(2)賃金引上げと労働生産性向上、(3)長時間労働の是正、(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備、(5)病気の治療、子育て・介護と仕事の両立、障害者就労の推進、(6)外国人材の受入れ、(7)女性・若者が活躍しやすい環境整備、(8)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実、(9)高齢者の就業促進──の9項目。

また、会議では、昨年末に有識者の検討結果を経て「同一労働同一賃金ガイドライン案」をまとめた。

実行計画は、各検討テーマごとに対応策を掲げ、加えて、施策実行の工程表(ロードマップ)を示している。その中で、非正規雇用の処遇改善と長時間労働の是正に関しては、法改正の方向性を提示した。

目玉の1つである長時間労働の是正では、罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するとした(労働基準法の改正)。

具体的には、週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とし、違反には罰則を課す。ただし、特例として、臨時的な特別の事情がある場合は、労使協定を締結すれば年720時間(月平均60時間)までの時間外労働を可能とする。また、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合の上限は、①2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内、②単月では休日労働を含んで100時間未満──とし、月45時間、年360時間を上回る特例の適用は年6回までとするとしている。この上限規制の仕組みは、現行制度の限度基準告示を法律に格上げする形のものとなる。

このほか、労働時間設定改善法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない努力義務を課す「勤務間インターバル制度」の導入を示した。

なお、現行制度で時間外労働の限度基準告示が適用除外されている自動車運転業務、建設事業、新技術、新商品等の研究開発業務については、自動車運転業務については、適用除外とはせず、一般則の施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用し、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けるとした。建設事業については、一般則の施行期日の5年後に、一般則を適用するとした。新技術、新商品等の研究開発業務については、医師による面接指導、代替休暇の付与など実効性のある健康確保措置を課すことを前提に、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することがないよう、その対象を明確化した上で適用除外とするとしている。

また、医師については、医療界の参加の下で検討の場を設け2年後を目途に規制のあり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得て、改正法施行期日の5年後を目途に規制を適用するとした。

もう1つの目玉である非正規雇用の処遇改善では、同一労働同一賃金ガイドライン案に記載していない待遇も含め、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争えるよう、その根拠となる法整備のための法改正の立案作業を進め、ガイドライン案については、改正法案の国会審議などを踏まえて最終的に確定し、改正法の施行日に施行するとした。

具体的な法改正の方向性としては、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法を改正し、改正法では、①労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備、②労働者に対する待遇に関する説明の義務化、③行政による裁判外紛争解決手続の整備──などを措置するとしている。

政府は、関係審議会の審議を経て、関連法案を早期に作成し、今年中にも国会に提出する方針。