長時間労働是正に向けた監督強化に10億円

 厚生労働省は、平成29年度予算概算要求の主要事項をまとめた。それによると、29年度の要求額は一般会計31兆1217億円で、対前年度当初比8108億円(2.7%)増となっている。来年度は、成長と分配の好循環の実現に向けて、働き方改革と生産性向上に関する予算を重点的に要求する。具体的には、月80時間超の残業が疑われる全ての事業場に対する監督指導の強化など長時間労働の是正に向けた法規制の執行強化に10億円を要求する。また、勤務間インターバルを導入する中小企業事業主に対する支援などに21億円を要求する。
 29年度予算の概算要求では、戦略的な重点として、成長と分配の好循環の実現に向けて、「ニッポン一億総活躍プラン」の新3本の矢、横断的課題である働き方改革と生産性向上に関する予算を重点的に要求・要望する。

 予算要求の主要事項は、(1)子どもを産み育てやすい環境づくり、(2)地域包括ケアシステムの構築に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供、(3)「働き方改革」の推進などを通じた労働環境の整備・生産性の向上、(4)女性、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画、(5)健康で安全な生活の確保、(6)自立した生活の実現と暮らしの安心確保、(7)障害者支援の総合的な推進、(8)安心できる年金制度の確立、(9)施策横断的な課題への対応──の9項目となっている。

 労働行政関係の主な要求事項をみると、重点要求事項となっている働き方改革と生産性向上に関しては、①同一労働同一賃金の実現に向けた非正規雇用の待遇改善・最低賃金の引上げ、②長時間労働の是正、③高齢者・障害者等の活躍促進──が柱になっている。

 具体的な施策としては、キャリアアップ助成金の拡充等により、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を強力に推進する。加えて、同一労働同一賃金の実現に向け、各都道府県に「非正規雇用労働者待遇改善支援センター(仮称)」を設置し、コンサルタントによる個別相談援助などを実施する。これらの施策にあわせて573億円を要求する。

 また、最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことで、全国加重平均が1000円となることを目指す。また、経営力強化・生産性向上に向けて、中小企業・小規模事業者への支援措置拡充などにあわせて29億円を要求する。

 次に、長時間労働の是正については、月80時間を超える残業が疑われる全ての事業場に対する監督指導の強化を図り、時間外・休日労働協定(36協定)の適正な締結・届出のための周知広報など法規制の執行強化に10億円を要求する。また、企業や労働者が働き方・休み方の現状や課題を自主的に評価し、改善できるよう「働き方・休み方改善指標」を活用したポータルサイトの機能の拡充を図るとともに、勤務間インターバルの導入など仕事と生活の調和に取り組む中小企業事業主に対する支援などに22億円を要求する。

 高齢者の活躍促進については、65歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行う企業に対する支援を実施するとともに、民間団体等を活用して高齢者の就業の場を提供するモデル事業に27億円を要求する。また、65歳以上の高齢者の就労を重点的に支援する「生涯現役支援窓口」、高年齢退職予定者キャリア人材バンクの機能を拡充するとともに、高齢者の技能講習と就労支援を一体的に実施する「高齢者スキルアップ・就職促進事業(仮称)」の創設に46億円を要求している。

 このほか、安全衛生関係の施策では、ストレスチェック制度等を通じたメンタル不調の予防を図るため、小規模事業場に対する助成などメンタルヘルス対策の推進に38億円を要求する。また、受動喫煙防止対策助成金の活用など職場における受動喫煙防止対策の推進に10億円を要求している。