36協定の時間外労働規制のあり方再検討開始

政府は6月2日、「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定した。同プランは、安倍内閣が掲げている「一億総活躍社会」に向け、(1)戦後最大の名目GDP600兆円、(2)希望出生率1.8、(3)介護離職ゼロ──の3つの目標を掲げ、国民生活における課題、検討すべき方向性、対応策(合計43項目)を示し、併せて、具体的な施策のロードマップを提示している。

同プランでは、「一億総活躍社会」の実現に向けた横断的課題である「働き方改革」の方向について、①同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善、②長時間労働の是正、③高齢者の就労促進──を挙げている。

そして、具体的な施策として、同一労働同一賃金の実現に向けて、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の的確な運用を図るため、どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例で示すガイドラインを策定し、普及啓発を行うとしている。

さらに、ガイドライン策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明らかにし、その是正が円滑に行われるよう、欧州の制度も参考にしつつ、不合理な待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の一括改正等を検討し、関連法案を国会に提出するとしている。

最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が1000円となることを目指すとしている。

また、サービス産業の賃金改善のため、サービスの質を見える化し、トラック運送、旅館、卸・小売業などの分野で、業種の特性に沿った指針を策定し、法的枠組みに基づく税制や金融による支援を集中的に行うことにより、サービス業が適正な価格を課することができる取引慣行を確立することを挙げている。

長時間労働の是正については、総労働時間を抑制するための法規制の執行強化を掲げている。具体的には、36協定において、健康確保に望ましくない長時間(月80時間超)を設定した事業者などに対する指導強化など、更なる取組みを行う。

また、関係省庁が連携して、下請けなどの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築するとしている。具体例として、①長時間労働の背景に下請法や独占禁止法(物流特殊指定)の違反が疑わ
れる場合に、その取締りを通じて長時間労働を是正する仕組みを構築する、②IT業界・トラック業界において、発注者や荷主と事業者の協働により、「急な仕様変更」、「長い手待ち時間」など、取引のあり方の改善と長時間労働の削減を進めるとともに、医療分野における勤務環境改善に取り組む──ことを挙げている。

このほか、長時間労働是正や勤務間インターバルの自発的導入を促進するため、専門的知識やノウハウを活用した助言・指導、こうした制度を積極的に導入しようとする企業に対する新たな支援策を展開するとしている。

さらに、労働基準法による36協定の時間外労働規制のあり方について再検討を開始し、時間外労働について、欧州諸国に遜色のない水準を目指すとしている。

高齢者の就労促進については、将来的に継続雇用年齢や定年年齢の引上げを進めていくため、2016年度から2020年度の5年間を集中取組期間と位置づけ、65歳以降の継続雇用・65歳までの定年延長を行う企業への支援を拡充するとともに、継続雇用延長・定年引上げを実現するためのマニュアルを策定し、企業への働きかけを行う。そして、2020年度に高齢者就業のインセンティブ効果と実態を検証し、継続雇用延長・定年引上げに係る制度のあり方を再検討するとしている。