違法残業事業場の6割が月100時間超え

厚生労働省は、昨年4月から12月に実施した長時間労働が疑われる事業場を対象とした監督指導の結果をまとめた。それによると、全体の76.2%に当たる事業場に労働基準関係法令違反が認められた。そして、そのうち月100時間を超える時間外労働が認められた事業場が59.7%、同150時間を超える時間外労働が認められた事業場が12.4%となっている。同省では、監督対象事業場を28年度は27年度の約2倍に拡大して監督指導を強化することとしており、過重労働の解消に向けた取組みを積極的に進める方針。

  •  この監督指導は、長時間労働削減推進本部(本部長・塩崎恭久厚生労働大臣)の指示の下、平成27年から実施しているもの。対象事業場は、1ヵ月当たり100時間を超える時間外労働が行われた疑いのある事業場や、長時間労働による過労死などに関する労災請求があったすべての事業場。

    監督指導の結果をみると、監督を行った8530事業場のうち、6501事業場(全体の76.2%)で労働基準関係法令違反が認められた。その主な違反内容は、違法な時間外労働があったものが4790事業場(全体の56.2%)、賃金不払残業があったものが813事業場(同9.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが1272事業場(同14.9%)となっている。

    主な業種別(監督実施事業場数が400を超えるもの)の違反率をみると、接客娯楽業が88.3%と最も高く、次いで、運輸交通業86.8%、製造業78.1%、商業74.7%、教育・研究業73.3%、建設業68.1%の順となっている。また、違反事項別では、違法な時間外労働は運輸交通業が75.0%と最も高く、以下、接客娯楽業71.5%、製造業60.8%、商業52.2%の順となった。賃金不払残業は接客娯楽業が14.8%と最も高く、以下、商業13.0%、建設業12.7%、運輸交通業9.8%の順となっている。

    違法な時間外労働があった事業場のうち、時間外労働の実績(法定労働時間を超える労働及び法定休日における労働)が最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり100時間を超えるものが2860事業場(59.7%)、同150時間を超えるものが595事業場(12.4%)、同200時間を超えるものが120事業場(2.5%)、同250時間を超えるものが27事業場(0.6%)となった。また、賃金不払残業があった事業場のうち、時間外労働の最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり100時間を超えるものが362事業場(44.5%)となっている。

    次に、主な健康障害防止に関する指導状況をみると、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが6971事業場(全体の81.7%)、そのうち時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導したものが5167事業場(改善を指導した事業場の74.1%)となっている。

    また、労働時間の把握方法が不適正なため指導したものが1558事業場(全体の18.3%)、そのうち時間外労働の最も長い労働者の時間数が1ヵ月当たり100時間を超えるものが477事業場(指導した事業場の30.6%)となった。

    なお、同省では、先月1日に開催した長時間労働削減推進本部の第3回会合において、長時間労働の事業場に対する重点監督の対象を時間外労働時間数が「月100時間超」から「月80時間超」に拡大することを決定した。同省の試算によれば、これにより28年度の監督対象事業場数は約2万事業場(年間)となる。