過労死等事案は早出の就労状況も適正把握

厚生労働省は、平成28年度の労災補償業務の運営に当たり留意すべき事項を都道府県労働局長に通達した。それによると、過労死等事案での労働時間把握上の留意事項として、例えば、事業場の始業時刻より相当早く出勤している場合、運送業務での運送先から事業場までの帰路の時間──なども、調査を尽くし、労働の実態が認められるものは労働時間として的確に反映させるとしている。また、実労働時間と直結する資料がない場合には、IC定期券等の乗車記録の確認を行うなどにより、労働時間を把握するとしている。

  •  同省では、新年度の労災補償業務運営に当たっての重点事項を毎年度末に策定し、都道府県労働局に指示している。

    28年度は、ここ数年の過労死等事案(脳・心臓疾患事案及び精神障害事案)に係る労災請求件数が年間2000件以上に上り、また、26年11月施行の「過労死等防止対策推進法」に関連して、労災補償行政に関する国民の関心が一層高まっている中で、被災労働者等の迅速かつ公正な保護という労災保険制度の目的を達成するため、これまで以上に都道府県労働局と労働基準監督署が連携して効率的な業務運営に努めるとしている。そのうえで、①過労死等事案に係る長期未決事案の削減と的確な労災認定、②労災補償業務の適正な事務処理の徹底、③労災補償業務の効率化と人材育成──を重点推進事項に掲げている。

    具体的には、過労死等事案に係る長期未決事案解消のためには更なる取組みが必要な状況にあるとして、迅速な初動調査の徹底及び都道府県労働局・労働基準監督署の管理者による的確な進行管理を行うとしている。

    また、過労死等事案においては実労働時間の把握が重要なことから、タイムカード等の実労働時間と直結する資料が得られない場合については、同僚、取引先や家族からの聴取に加えて、事業場建物への入退館記録、パソコンによる作業履歴等の分析、IC定期券等の乗車記録の確認を行うなど、労働時間の迅速・適正な把握を行うとしている。

    さらに、行政事件訴訟において、「事業場の始業時刻より相当程度早い時刻に出勤している事実が認められるにもかかわらず、その時間帯における就労状況について関係者への確認を十分に行わず、一律に始業時刻以降を労働時間としていたもの」、「運送業務に従事する労働者の運送先から事業場までの帰路の時間を労働時間に算入していなかったもの」などの事案がみられたことから、「就労状況について調査を尽くした上で、実態として労働していることが認められた場合には、労働時間として的確に反映させるなど、労働時間の適正な把握に努める」としている。