違法残業や賃金不払残業の違反率73.9%
厚生労働省は、平成27年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の結果をまとめた。それによると、監督を実施した5031事業場のうち、73.9%に当たる3718事業場に労働基準関係法令違反が認められた。違反率は、26年11月に実施した同様の監督の結果(違反率83.6%)と比べ9.7ポイント下回った。違反内容をみると、全体の半数近い2311事業場に違法な時間外労働があり、また、約1割に当たる509事業場に賃金不払残業があった。同省は、違反事業場に対しては、是正に向けた指導を行っている。
- 今回の監督は、同省の「長時間労働削減推進本部」(本部長・塩崎恭久厚生労働大臣)の指示の下、長時間の過重労働による過労死に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施したもの。
監督結果をみると、監督を行った5031事業場のうち、3718事業場に労働基準関係法令違反が認められた(違反率73.9%)。主な違反事項別では、時間外労働協定(36協定)がなく時間外労働を行っているもの、36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行っているものなど違法な時間外労働があった事業場が2311事業場(全体の45.9%)、賃金不払残業があった事業場が509事業場(同10.1%)、過重労働による健康障害防止措置(1ヵ月当たり100時間以上の時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないものなど)が未実施の事業場が675事業場(同13.4%)となっている。
このうち、違法な時間外労働があった2311事業場における時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数(1ヵ月)をみると、100時間を超えるものが799事業場(違反事業場の34.6%)、うち150時間を超えるものが153事業場(同6.6%)、うち200時間を超えるものが38事業場(同1.6%)となっている。
主な業種別(監督実施事業場数が100以上の業種)の違反率をみると、接客娯楽業が85.0%と最も高く、次いで、運輸交通業79.3%、保健衛生業77.4%、商業75.6%、教育・研究業74.1%、製造業72.7%、建設業72.1%の順となっている。
次に、健康障害防止に係る指導状況をみると、監督を実施した事業場のうち2977事業場に対して、長時間労働を行った労働者に対し、医師による面接指導等を実施することなどの過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。
指導事項(重複あり)の内訳は、時間外・休日労働を1ヵ月当たり80時間以内とするための具体的方策の検討・具体的な期限までの実施を指導したものが1772事業場、時間外・休日労働を1ヵ月当たり45時間以内とするよう削減に努め、その具体的方策を検討し、その着実な実施に努めるよう指導したものが1202事業場、長時間労働による労働者の健康障害防止対策について、衛生委員会等での調査審議(関係労働者の意見聴取)の実施を指導したものが685事業場、2~6ヵ月で平均80時間を超える時間外労働を行っている労働者または1ヵ月100時間を超える時間外労働を行っている労働者について、面接指導等の必要な措置の実施に努めるよう指導したものが392事業などとなっている。
また、1003事業場に対して、労働時間の管理が不適正であるため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13・4・6 基発第339号)に適合するよう労働時間を適正に把握することなどを指導した。
なお、同省では、これら違反が認められた事業場に対しては、是正に向けた指導を行っているところであり、今後も、月100時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組みを積極的に行っていくこととしている。