パートの正社員化5年で500万人目指す
厚生労働省は、今後5か年の非正規雇用対策を示した「正社員転換・待遇改善実現プラン」を決定した。同プランは、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善について、対象者別に目標や具体的取組みを掲げている。主なものとしては、キャリアアップ助成金を活用して有期契約から正規雇用等に転換する労働者数15万人、パートタイム労働法に基づく正社員転換措置により正社員に転換する労働者数500万人──としている。また、非正規雇用労働者共通の待遇改善として、同一労働同一賃金の推進策を検討するとしている。
- 同プランは、平成28年度から32年度までの5か年を計画期間としている。そして、計画期間中の非正規雇用対策について、正社員転換等及び待遇改善の具体的取組事項を対象者別に示すなどし、併せて、各取組みにおける目標値を掲げている。
まず、不本意非正規雇用労働者の正社員転換等に関しては、①ハローワークにおける正社員求人の積極的な確保・正社員就職に向けた担当者制による支援、②キャリアアップ助成金の活用促進による正社員転換等の推進、③就業経験に応じた公的職業訓練や地域のニーズに応じた成長分野で求められる人材育成の推進──に取り組むとしている。
そして、目標として、不本意非正規雇用労働者の割合(全体平均)を10%以下とするとしている(26年平均18.1%)。また、ハローワークによる正社員就職・正社員転換数450万人(28年度~32年度累計。26年度:89万人)を掲げている。
対象者別の正社員転換等の取組みでは、若者等に対しては、新卒応援ハローワーク等において、在学段階からの就職に向けたセミナーなどを通じ、新規学卒者等の正社員就職実現を図るほか、フリーター等の正社員転換を促進するため、わかものハローワーク等において、地域ネットワークを活用した支援を行うとともに、学校等と連携して、学校中退者等への切れ目のない支援を行う。
また、若者の職業能力開発を支援するため、高卒者等を対象に、ジョブ・カードを活用した雇用型訓練(OJTとOff-JTを組み合わせた実践的訓練)を推進する。目標値は、新規大学卒業者の正社員就職割合95%(27年3月卒92.2%)、新規高校卒業者の正社員就職割合96%(同94.1%)、フリーター数124万人(ピーク時217万人(平成15年))──などとしている。
派遣労働者対策では、派遣元に対して計画的な教育訓練や希望者へのキャリアコンサルティングを義務付けた改正労働者派遣法(27年9月30日施行)の円滑施行などにより、派遣社員の不本意非正規雇用労働者の割合を現状から半減させるとしている(26年平均41.8%)。
有期契約労働者に対する取組みでは、労働契約法による無期転換ルールが実際に適用される30年4月1日までの間に集中的に制度の周知・企業における導入支援を図る。また、キャリアアップ助成金を活用した有期契約労働者の正社員雇用等への転換を促進する。目標値は、不本意雇用労働者の割合を現状から半減(26年度平均34.4%)、助成金活用による正規雇用等転換者数15万人(28年度~32年度累計。26年度:72人)としている。
短時間労働者対策では、パートタイム労働法第13条に基づく各事業所の正社員転換推進措置により、短時間労働者の正社員転換が進むよう、好事例の収集・周知等に取組む。目標値は、正社員転換者数500万人(28年度~32年度累計。現状:1年につき推計70万人)を掲げている。
次に、非正規雇用労働者共通の待遇改善として、①同一労働同一賃金の推進策の検討(省内推進チーム設置済み)、②名目GDPの成長率にも配慮した最低賃金の引上げ、③育児・介護休業の取得促進のための制度見直し、セクハラやマタハラの未然防止の徹底(関係法案を国会提出済み)、④産前産後期間中の短時間労働者等の国民年金保険料の免除(関係法案を3月上旬国会提出予定)──などに取り組むとしている。
なお、非正規雇用対策の推進にあたっては、地域の実情等に応じたきめ細かな対策が重要であることから、各都道府県労働局に設置されている「都道府県正社員転換・待遇改善実現本部」において、今月中に「地域プラン(地域計画)」(仮称)を策定することになっている。