長時間労働行う事業場約4500ヵ所対象に
厚生労働省は、「過労死等防止啓発月間」(11月)の一環として昨年から開始した「過重労働解消キャンペーン」の取組みの目玉として、過労死等の労災請求が行われた事業場などを対象とした重点監督を実施する。重点監督では、時間外・休日労働が36協定の範囲内で行われているかなどを確認し、法違反が認められた場合は是正指導を行う。さらに、重大・悪質な事案については送検処分する方針。なお、昨年11月に実施した同様の重点監督では、監督を実施した4561事業場のうち83.6%の事業場に法違反が認められた。
同省では、過重労働などの撲滅に向けた取組みを推進する「過重労働解消キャンペーン」(実施期間:11月1日~30日)を昨年から実施している。これは、昨年11月1日に施行された「過労死等防止対策推進法」により、11月が「過労死等防止啓発月間」と定められたこと、また、「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)に、引き続き、「働き過ぎ防止の取組強化」が盛り込まれたことなどから、それにあわせて行うもの。
キャンペーン期間中の取組みの中心的事項が重点監督の実施。監督の対象となる事業場は、(1)長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場(三六協定の内容から長時間労働が行われていると推測される事業場を含む)、(2)労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等により、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業──となっている。
監督では、①時間外・休日労働が36協定の範囲内か、②賃金不払残業(サービス残業)がないか──を重点的に確認し、法違反が認められた場合は是正指導を行う。さらに、不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導し、また、長時間労働を行っている者については、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導する。
そして、重大・悪質な違反が確認された場合には送検処分とし、公表する方針。
なお、昨年の同キャンペーン期間中に実施した同様の重点監督では、監督を実施した4561事業場のうち83.6%に当たる3811事業場に労働基準関係法令違反が認められた。
その主な違反内容は、「違法な時間外労働があったもの」が2034事業場(全体の50.5%)、「賃金不払残業があったもの」が955事業場(同20.9%)、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が72事業場(同1.6%)となっていた。
同省によると、「各都道府県の労働局・労働基準監督署で対象事業場を選定して監督を実施することになるが、全体では昨年と同程度の事業場数となるのではないか。昨年の監督で法違反が認められ是正勧告を行った事業場の中には、その後、送検処分に至ったものが数件あった」(労働基準局監督課)としている。