過労死防止・過重労働解消対策に73億円

厚生労働省は、平成28年度予算概算要求の主要事項をまとめた。それによると、28年度の要求額は一般会計30兆6675億円で、対前年度当初比7529億円(2.5%)増となっている。予算要求の主要事項のうち、労働施策の重点をみると、ハローワークによる正社員就職の促進やキャリアアップ助成金の拡充等により、正社員転換・非正規雇用労働者の待遇改善などに456億円を要求する。また、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づく過労死等防止対策の推進、過重労働解消に向けた取組みに73億円を要求する。

  •  28年度予算要求の主要事項は、(1)安心で質の高い医療・介護サービスの提供、(2)子どもを産み育てやすい環境づくり~人口減少社会への対応~、(3)「全員参加の社会」の実現加速、(4)公正、適正で納得して働くことのできる環境整備、(5)健康で安全な生活の確保、(6)自立した生活の実現と暮らしの安心確保、(7)障害者支援の総合的な推進、(8)安心できる年金制度の確立、(9)施策横断的な課題への対応──となっている。

    また、28年度の予算要求では、世界に類を見ない少子高齢化等の厚生労働行政を取り巻く課題に対応するため、伊勢志摩サミットが開催されることも念頭に戦略的な重点要求・要望を行うこととし、労働施策関係では、①「全員参加の社会」の実現加速、②未来を支える人材力強化──を重点事項としている。

    労働関係の主な要求事項をみると、女性の活躍の動きを加速するため、①女性の活躍推進に向けた取組みを行う企業に対する助成金の拡充・中小企業に対する行動計画の策定支援等の強化、②マザーズハローワークの事業拠点拡充による子育て中の女性等に対する再就職支援推進、③育児等で離職した女性の再就職が円滑に進むよう、求職者支援制度における育児等と両立しやすい短時間訓練コース・訓練受講の際の託児サービスの新設等──などに49億円を要求している。

    若者の活躍推進対策では、新卒応援ハローワーク等における新卒者等に対する就職支援や、既卒3年以内の者等を対象とした助成金の創設により、既卒3年以内の者等の採用・定着の促進を図るなどの正社員を希望する新卒者等の就職実現を図る施策などに104億円を要求した。

    また、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応策の充実強化として、夜間・休日に労働基準法等に関して無料で相談を受け付ける常設のフリーダイヤル電話相談「労働条件相談ほっとライン」の運営などによる相談体制の充実などに3億1000万円を要求している。

    非正規雇用労働者対策では、「正社員転換・待遇改善実現プラン(仮称)」に基づき、ハローワークによる正社員就職の促進やキャリアアップ助成金の拡充等により、正社員を希望する人の正社員化、非正規雇用で働く人の待遇改善などに456億円を要求している。

    次に、働き方改革の実現として、過重労働解消に向けた取組み・過労死等防止対策の推進等、ワーク・ライフ・バランスの実現、持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備等に111億円を要求した。主な施策としては、36協定の適正化に係る指導、過重労働による健康障害防止のための重点的な監督指導、過重労働解消のためのセミナー等を行う。また、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づき、過労死等に関する調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援など、過労死等防止対策の一層の推
    進を図るとしている。

    安全衛生関係の施策では、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた関係工事等に係る安全対策をはじめとして、建設業における安全対策の充実等を図る。また、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策の周知徹底、ストレスチェック等を実施する小規模事業場に対する支援の拡充などにあわせて113億円を要求している。