全国で16円から19円の引上げを提示

中央最低賃金審議会(会長・仁田道夫国士舘大学教授)は7月30日、平成27年度地域別最低賃金改定の目安について、ランクごとの引上げ額をAランク19円、Bランク18円、C・Dランクは16円とする答申をとりまとめ、塩崎厚労相に提出した。厚生労働省によると、目安が示した引上げ額の全国加重平均は18円となっている。今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会で引上げ額が審議され、10月初めには改定後の最低賃金が発効する見通し。なお、目安どおりに最低賃金が改定された場合、最高額は東京都の907円となる。

地域別最低賃金は、各都道府県ごとに、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮するとともに、生活保護施策との整合性に配慮して決定することになっている。

地域別最低賃金は毎年見直しが行われており、額の改定にあたっては、中央最低賃金審議会が改定の目安を各都道府県の地方最低賃金審議会に示す方式が昭和53年以降とられている。

最近5年間の全国加重平均の引上げ額は、22年度17円、23年度7円、24年度12円、25年度15円、26年度16円となっている。

今年度の目安をめぐる中央最低賃金審議会の審議は、7月1日に厚生労働省が同審議会に目安の調査審議を諮問し始まった。同審議会は、例年通り目安に関する小委員会を設け、4回にわたって審議を行った。

小委員会では、労働者側委員は、①暮らしの底上げに直結する最低賃金の大幅な引上げが必要、②平成26年平均の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の3.3%に加え組織労働者の賃上げ結果を上回る引上げが必要、③ランク間の水準の差も拡大してきており、経済実態に応じて全国的な整合性を確保できるような目安とすべきである、④雇用戦略対話合意の全国で最低でも800円という目標達成へ向け、早期に800円到達への道筋を示す目安額とすべきである──などを主張した。

一方、使用者側委員は、①中小企業・小規模事業者に対する生産性向上のための政府の支援策の成果が生産性の上昇という明確な形で認められることが重要であり、十分な生産性の上昇が確認できないまま、最低賃金の大幅な引上げだけが求められることになれば、引上げの具体的な根拠が説明できない目安を地方最低賃金審議会に示すことになる。そうなれば、地方での審議において大きな混乱を招くことになり、ひいては、目安そのものに対する信頼が失われることになりかねない、②今年度のランク別の目安については、「法の原則」である地域における労働者の生計費、賃金及び通常の事業の賃金支払能力の3要素を総合的に表しているデータを重視した審議を行うとともに、最低賃金のはり付き状況などを踏まえたランクごとの実態を反映した目安とすべきである──などを主張した。

その結果、27年度地域別最低賃金改定の目安については、その額に関し意見の一致をみるに至らず、昨年同様、目安に関する公益委員見解及び小委員会報告を地方最低賃金審議会に提示するという答申内容となった。

公益委員見解は、(1)都道府県の各ランクごとの引上げ額の目安は、Aランク19円、Bランク18円、C・Dランクは16円とする、(2)地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する、(3)生活保護水準と最低賃金との比較では、来年度以降の目安審議においても、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないかを確認することが適当と考える──などというもの。

今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会において最低賃額改定の審議が行われ、早い地域では10月初めには新しい最低賃金が発効することになる。

厚生労働省によると、今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は18円(昨年度は16円)となり、目安額どおりに最低賃金が決定されれば、最低賃金が時給で決まるようになった平成14年度以降で最も高い引上げとなる。

また、目安額度どおりの引上げが行われた場合、最も高い最低賃金は東京の907円、一方、最も低い最低賃金は鳥取、高知、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄の693円となる。