「いじめ・嫌がらせ」の相談がさらに増加

厚生労働省は、「平成26年度個別労働紛争解決制度施行状況」をまとめた。それによると、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた相談のうち、民事上の個別労働紛争に係る相談件数は23万8806件となっており、前年度と比べ2.8%減少した。民事上の相談の内訳では、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが年々増加を続け3年連続でトップとなり、全体の2割以上を占めている。また、民事上の個別労働紛争の解決を図るための都道府県労働局長による助言・指導申出件数は9471件(対前年度比5.5%減)となっている。

  •  同省では、労働関係についての個々の労働者と事業主間の紛争を円満に解決するための制度として、「個別労働紛争解決制度」を設けている。そして、制度の効果的な運用を図るために、ワンストップサービスの「総合労働相談コーナー」を全国381ヵ所設置している。

    相談者が同コーナーに相談の申出を行い、それが民事的なトラブルに発展した場合には、解決の手段として、相談者の求めに応じて都道府県労働局長による助言・指導、また、紛争調整委員会によるあっせんを行う仕組みとなっている。

    同省のまとめによると、26年度に寄せられた相談件数は103万3047件で前年度(105万42件)と比べ1.6%減少し、5年連続の減少となった。そのうち、労働基準法等の法違反を伴わない解雇や労働条件の引下げなどの民事上の相談件数は23万8806件で前年度(24万5783件)と比べ2.8%減少し、3年連続の減少となった。

    民事上の相談内容の内訳(内訳が複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)をみると、「いじめ・嫌がらせ」(職場のパワハラに関するものを含む)に関するものが6万2191件(全体の21.4%)と最も多く、次いで、「解雇」3万8966件(同13.4%)、「その他の労働条件」3万6026件(同12.4%)、「自己都合退職」(労働者が退職を申し出た際のトラブルで、「辞めさせてもらえない」などが多い)3万4626件(同11.9%)、「労働条件の引下げ」2万8015件(同9.6%)、「退職勧奨」2万1928件(同7.5%)、「雇止め」1万2163件(同4.2%)と続いている。

    「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、24年度に「解雇」に関する相談件数を上回り初めてトップとなり、3年連続でのトップとなった。

    また、相談内容の中で、特に増加が目立つのが、「いじめ・嫌がらせ」と「自己都合退職」の2つで、いずれも10年以上連続で増え続けている。最近5年間の増加幅をみると、「いじめ・嫌がらせ」は、22年度が対前年度比10.2%増、23年度が同16.6%増、24年度が同12.5%増、25年度が同14.6%増、そして、26年度が同5.1%増となっている。「自己都合退職」は、22年度が対前年度比21.8%増、23年度が同28.1%増、24年度が同14.6%増、25年度が同11.0%増、そして、26年度が同4.8%増となっている。

    これに対し、「解雇」に関する相談件数は、21年度(6万9121件)をピークに減少し続けており、22年度が対前年度比13.0%減、23年度が同3.9%減、24年度が同10.9%減、25年度が同14.7%減、そして、26年度が同11.4%減となっている。

    次に、都道府県労働局長による助言・指導についてみると、申出件数は9471件となっており、前年度(1万24件)と比べ553件(5.5%)減少し、2年連続の減少となった。申出内容の内訳(複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)は、「いじめ・嫌がらせ」が1955件(全体の18.9%)と最も多く、次いで、「その他の労働条件」1610件(同15.6%)、「解雇」1303件(同12.6%)、「自己都合退職」947件(同9.2%)、「労働条件の引下げ」941件(同9.1%)、「退職勧奨」745件(同7.2%)と続いている。

    なお、助言・指導の申出があったものの中で、26年度内に処理したものは9451件となっており、このうち処理期間の目標である1ヵ月以内に処理したものが9193件(97.3%)となっている。

    また、紛争調整委員会によるあっせんについてみると、申請受理件数は5010件となっており、前年度(5712件)と比べ702件(12.3%)減少した。申請内容の内訳(複数にまたがる事案があるため、合計は前記件数と一致しない)は、「いじめ・嫌がらせ」が1473件(全体の26.7%)と最も多く、次いで、「解雇」1392件(同25.2%)、「その他の労働条件」496件(同9.0%)、「雇止め」480件(同8.7%)、「退職勧奨」422件(同7.7%)、「労働条件の引下げ」382件(同6.9%)と続いている。

    なお、あっせんの申請があったものの中で、26年度内に処理したものは5045件となっており、このうち処理期間の目標である2ヵ月以内に処理したものが4639件(92.0%)となっている。