月100時間超の違反が年3箇所以上を対象
厚生労働省はこのほど、違法な長時間労働を繰り返している企業名を公表する取組みを開始し、公表基準などを都道府県労働局長に通達した。それによると、公表対象となる企業は、①複数の都道府県に事業場を有する企業(中小企業を除く)、②労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反があり、かつ、1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えている、③1事業場10人以上または4分の1以上の労働者に前記②の事実がある、④前記③の実態が概ね1年間に3事業場以上ある──となっている。
同省は、近年、過労死の発生が社会的な問題となっている状況の下、長時間労働の抑制・過重労働による健康障害防止対策を強化すべく、昨年9月末に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置し、全省的な取組みを進めている。
また、今年に入って、国会審議の場で、違法な長時間労働を行っている企業に対する取組みの強化について議論されている。
違法な長時間労働を繰り返す企業名を公表することとした今回の取組みには、こうした背景がある。
同省では、違法な時間外・休日労働を行っている事案については、これまでも重大または悪質なものにあっては司法処分(送検)しているところであり、送検事案についてはその事実を公表している。
今回の企業名公表の取組みは、司法処分とは別のもので、社会的に影響の大きい企業において、違法な長時間労働が相当数の労働者について一定期間内に複数の事業場で繰り返されている場合、都道府県労働局長がその企業の経営トップに対して、全社的に早期是正を図るよう指導を行い、併せて、指導を行った事実を公表するというもの。企業の経営トップに対して是正指導を行ったことを広く社会に情報提供することにより、他の企業における遵法意識を啓発し、自主的な改善を促進させることを目的としている。
指導の対象とする企業は、複数の都道府県に事業場を有する企業となっている。なお、中小企業(中小企業基本法に規定する「中小企業者」)は対象としないこととしている。
指導の対象となる基準は、①労働時間、休日または割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること、②1箇所の事業場において、前記①に該当する違法な長時間労働の実態が10人以上の労働者もしくは当該事業場の4分の1以上の労働者に認められること、③概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で、前記①に該当する違法な長時間労働が、前記②に該当する労働者に認められること──となっている。
指導・公表の具体的な方法は、概ね1年間のうちに、同一企業で3箇所目となる前記①及び②に該当する事実が確認された段階で、その企業の経営トップを所轄の都道府県労働局に呼び出し、前記①の労働基準法違反に係る是正勧告書を交付するとともに、全社的な早期是正に向けた取組みを実施することを求める内容の指導票を併せて交付すこととしている。
そして、指導を行った企業名及び繰り返し行われた違法な長時間労働の実態、是正勧告書・指導票を受け取ったことに対するその企業の認識、早期是正に向けた取組方針などを指導を行った労働局のホームページ上に掲載することとしている。