面接指導の申出あれば1ヵ月以内に実施を

厚生労働省はこのほど、今年12月1日施行の改正労働安全衛生法によるストレスチェック制度に関する細部事項を示した通達を都道府県労働局長あてに発出した。それによると、産業医の職務にストレスチェック等に関する事項を追加した点に関して、ストレスチェック等の実施に直接従事することまでは要しないが、安全衛生委員会に出席して意見を述べるなど、何らかの形で関与する必要があるとしている。また、ストレスチェックの結果、労働者が面接指導を申し出た場合は、概ね1ヵ月以内での実施が必要としている。
 常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付ける改正労働安全衛生法が、今年12月1日に施行される(労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務)。

 厚生労働省は、ストレスチェック制度の実施に向けて、制度の実施・運用に必要な事項を定めた関係省令(労働安全衛生規則)及び指針を制定・公表している(27年4月15日)。そして、今回発出した通達では、改正法の趣旨・改正規則の細部事項などについて示している(27年5月1日付)。

 通達で示された主な事項をみると、まず、ストレスチェック及びその結果に基づく医師による面接指導の費用について、「法で事業者にストレスチェック及び面接指導の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである」としている。また、ストレスチェック及び面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、「当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議をして定めるべきものではあるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、ストレスチェック及び面接指導を受けるのに要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」としている。

 次に、ストレスチェック制度の創設に伴い、労働安全衛生規則第14条で定める産業医の職務に、ストレスチェック及び面接指導等に関する事項が追加されたことに関して、「当該規定は産業医がストレスチェック及び面接指導等の実施に直接従事することまでを求めているものではなく、衛生委員会又は安全衛生委員会に出席して、医学的見地から意見を述べるなど、何らかの形でストレスチェック及び面接指導の実施等に関与すべきことを定めたものであること。ただし、事業場の状況を日頃から把握している当該事業場の産業医がストレスチェック及び面接指導等の実施に直接従事することが望ましい」としている。

 また通達では、ストレスチェック結果が労働者の意に反して人事上の不利益な取り扱いに利用されることがないようにするため、当該労働者の人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者はストレスチェック実施の事務に従事できないことになっている点に関して、従事できない事務・従事できる事務の具体例を挙げている。

 従事できないものとしては、①労働者が記入した調査票の回収、内容の確認、データ入力、評価点数の算出等のストレスチェック結果を出力するまでの労働者の健康情報を取り扱う事務、②ストレスチェック結果の封入等、ストレスチェック結果を出力した後の労働者に結果を通知するまでの労働者の健康情報を取り扱う事務、③ストレスチェック結果の労働者への通知の事務、④面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対する面接指導の申出の勧奨の事務、⑤ストレスチェック結果の集団ごとの集計・分析に係る労働者の健康情報を取り扱う事務──としている。

 一方、従事しても差し支えないものとしては、①事業場におけるストレスチェックの実施計画の策定、②ストレスチェックの実施日時や実施場所等に関する実施者との連絡調整、③ストレスチェックの実施を外部機関に委託する場合の外部機関との契約等に関する連絡調整、④ストレスチェックの実施計画や実施日時等に関する労働者への通知、⑤調査票の配布、⑥ストレスチェックを受けていない労働者に対する受検の勧奨──を挙げている。

 このほか、ストレスチェック結果に基づく医師による面接指導の実施について、労働者の申し出は検査結果の通知を受けた後遅滞なく行う(労働安全衛生規則第52条の16第1項)としている点について、「遅滞なく」とは、「概ね1ヵ月以内をいう」としている。また、事業者は労働者から申し出があったときは遅滞なく面接指導を行わなければならない(同条第2項)としている点について、「遅滞なく」とは、申し出後、「概ね1ヵ月以内をいう」としている。