28年度の雇用保険料率は1000分の11に
雇用保険料率は、労働保険徴収法で基本となる率が1000分の17.5(うち労使折半負担の失業等給付分が1000分の14、事業主負担の雇用保険二事業分が1000分の3.5)と定められている。ただし、雇用保険の財政状況に照らして一定の要件を満たす場合には、法律を改正することなく、厚生労働大臣が雇用保険料率を変更する仕組み(弾力条項)がとられている。
弾力条項の発動要件は、毎会計年度末における保険の収支や積立金などをベースに決められている。また、弾力条項の発動による雇用保険料率の変更は、失業等給付分についてはプラスマイナス1000分の4の範囲、雇用保険二事業分についてはマイナス1000分の0.5の範囲となっている。
厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長・岩村正彦東京大学大学院教授)が昨年末にまとめた報告書は、失業等給付に係る雇用保険料率の見直しを指摘した。
報告書は、失業等給付に係る財政収支が近年黒字基調で推移し、平成26年度の差引剰余は1965億円、26年度末の積立金残高は6兆2586億円となっていることを示し、「過去10年間(平成17年度から平成26年度まで)の平均的な雇用情勢(受給者実人員約61万人)を想定すると、その場合に収支が概ね均衡となる雇用保険料率は1000分の12程度となる」とした。
加えて、「仮に基本となる雇用保険料率を1000分の12とし、来年度より弾力条項を発動して1000分の8に引き下げたケースを想定して試算を行った場合、平均的な雇用情勢を前提とすると、引き続き雇用保険財政の安定的な運営が確保できることが窺える」と指摘した。
そのうえで、基本となる失業等給付に係る雇用保険料率を平成28年度以降1000分の12とし、また、28年度の失業等給付に係る雇用保険料率を弾力条項発動のうえ1000分の8とすべきであるとした。
同省は、報告書の内容を踏まえ、基本となる失業等給付に係る雇用保険料率について1000分の12とする労働保険徴収法の改正をこの3月末までに行い、弾力条項を発動して雇用保険料率の引下げを行う予定。
なお、雇用保険二事業に係る雇用保険料率については、平成26年度末の雇用安定資金残高が8329億円となっており、弾力条項発動の要件を満たすことから、28年度は1000分の3(建設事業は1000分の4)となる。
これにより、平成28年度の雇用保険料率は、一般の事業が1000分の11(27年度1000分の13.5)、農林水産・清酒製造業が1000分の13(同1000分の15.5)、建設事業が1000分の14(同1000分の16.5)となる。